近年におけるエレベーター事故及び基準改正の概要
◆ 平成24年11月1日、石川県金沢市のアパホテルで、63歳の清掃作業員の女性がエレ
ベーターに挟まれる死亡事故が発生しました。以下、その概要です。
「金沢市のシンドラーエレベーターによる死亡事故」
1 事故の概要 |
○発生年月日:平成24年10月31日 ○発生場所:石川県金沢市 アパホテル金沢駅前エレベーター ○事故概要:扉が開放中にエレベーターが上昇したため、エレベー ターに乗ろうとしていた1名が、カゴと3方枠に挟ま れ死亡した。 |
2 エレベーターの 概要 |
○製造会社:シンドラーエレベーター㈱ ○保守業者: 同 上 (日本エレベーター工業㈱) ○設置年:平成10年 (2006年港区での事故機と同型) |
3 原 因 |
2006年港区で高校生が挟まれて死亡した事故と同様に、何らか の原因でブレーキがきかなくなり、扉が開いたままカゴが上昇した ことによる事故。詳細は調査中 |
4 その他 |
2重ブレーキなどの安全装置を設置する改修工事費の1/3を 国が補助することを行っている。 なお、日本以外の殆どの先進国では、2重ブレーキの規制がある ようである。また、ヨーロッパなどでは、年1回、契約点検業者以 外の第三者機関による安全点検が実施されている。 |
◆ 平成23年7月、エレベーターのロープ (主索) 3本がすべて切断し、かごが落下する
という前代未聞の事故が発生しました。以下、その概要です。
「平和台駅エレベーター主索破断事故の調査報告書」の概要
1 事故の概要 |
○発生年月日:平成23年7月26日 ○発生場所:東京メトロ有楽町平和台駅 エレベーター ○事故概要:走行中にエレベーターの3本の主索すべてが破断し、 かごが落下して、けが人1名が発生した。 |
2 エレベーターの 概要 |
○製造会社:三菱電機㈱ ○保守業者:三菱電機ビルテクノサービス㈱ ○検査済証:平成16年1月15日 |
3 原 因 |
「主索が劣化していたにもかかわらず適切な点検が実施されず に、使用し続けたため、主索が破断したもの。」 劣化を進行させた要因は、主索に多くの曲げ回数が発生する構 造であること。起動回数が多いこと。点検しにくい構造であるこ と。昇降路内部の温度、湿度が高いこと。さび等に対する判定基 準が具体的でないこと。など。 |
4 意 見 |
国土交通省は、事故原因を防止するための判定基準、検査方法 等を規定すること。 国土交通省は、主索の曲げ回数の多いエレベーターの、主索の 構造上の安全確保策を検討すること。など。 |
5 調査機関 | 社会資本整備審議会 昇降機等事故調査部会 |
現在、国土交通省では、上記報告書を受け、点検基準の改正を行っているところです。
なお、構造等の基準改正は行われない見込みです。
◆ 次に、平成17年7月の千葉県北西部地震において発生したエレベーターの閉じ込め
事故や平成18年6月の港区シティハイツ竹芝のシンドラー社製エレベーターの戸開走
行事故等を受け、平成20年9月19日、建築基準法の一部を改正する政令が公布され、
平成21年9月28日に施工されました。以下、その概要です。
[政令改正の概要]
1 戸開走行保護装置の義務付け (令第129条の10第3項第1号) |
○エレベーターの巻上機や制御装置に故障が生じて、 ドアが閉じる前にかごが昇降した場合に自動的に かごを制止する安全装置の設置の義務付け、2重 ブレーキ構造とすることなど。 (乗り場戸の挟まれ防止対策) |
2 地震時管制運転装置の義務付け (令第129条の10第3項第2号) |
○P波感知器付地震時管制運転と予備電源装置の 義務付け。 (エレベーターの閉じ込め防止対策) |
3 主要機器の耐震補強装置 (令第129条関係) |
○かご、釣合いおもりのレールからの外れ防止対策 ○主索等の滑車からの外れ防止対策 ○昇降路内突出物への主索等の絡まり防止対策 ○駆動装置・制御器の転倒・移動防止対策 ○釣合いおもりの脱落防止対策 |
◆ 最後に、エレベーター昇降路は、竪穴部分としてその昇降路とその他の部分とを準
耐火構造の壁又は常時閉鎖若しくは煙感知器連動の防火設備 (乗場戸の近傍で、遮炎・
遮煙の両方の性能を有したもの)で区画することになっています。以下、その概要です。
[基準の概要]
区画に用いる防火設備として は、次の性能を有するもの。 |
○「遮炎性能」 建基法2-9の2-ロに基づく大臣認定 他 ○「遮煙性能」 建基令112-14-2に基づく大臣認定 他 |
適用日 | 平成14年6月1日 |
既存のマンションで、これらの基準 (戸開走行保護装置、地震時管制運転装置及び
エレベーター昇降路の防火設備)に、現時点で適合しないエレベーターについては、
いわゆる「既存不適格」という扱いになり、そのまま使用している場合には、法令違
反とはなりません。
しかし、増築や大規模改修などにより確認申請提出の際には、新基準への適合義務
が生じることとなりますので、注意が必要です。
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